ブラジルの歴史や文化に触れるとき、カポエイラという言葉を聞いたことはないだろうか。カポエイラは、アフリカから連れてこられた奴隷たちが自由を求めて生み出した、音楽とダンスと格闘技の融合。
カポエイラの魅力は、ホーダ(Roda)と呼ばれる円形の空間で展開されるゲームにある。ホーダでは、カポエイリスタ(カポエイラの達人)たちが、伝統的な楽器や歌に合わせて、互いに挑発や敬意を表しながら、美しくも激しい動きで対話する。
ホーダは、カポエイラの精神や哲学を体現する場でもある。この記事では、カポエイラのホーダの歴史や意味、ルールや作法などについて詳しく解説する。カポエイラに興味がある方は、ぜひ読んでほしい。
ホーダとは
ホーダとは、カポエイラのゲームが行われる円形の空間のこと。Roda(ホーダ)を直訳すると、車輪や輪、サークル、円という意味になる。カポエイラにおけるホーダは、カポエイラの音楽や歌、ダンスや格闘技、そして社会性や文化性を一体化させる重要な要素。
ホーダの中心には、カポエイリスタたちが二人ずつ入って、互いに挑戦し合う。ホーダの周りには、他のカポエイリスタたちや見物人たちが立って、手拍子や歌で応援する。
ホーダの正面には、伝統的な楽器で構成されるオーケストラが座って、カポエイラのリズムやメロディを奏でる。その中でも最も重要な楽器は、一本弦の弓状の楽器であるビリンバウ。ビリンバウは、ゲームの開始や終了を合図したり、ゲームの速度や雰囲気を決めたりする。ビリンバウに合わせて、リードボーカルがカポエイラの歌を歌い、その歌に対してホーダの人々がコーラスで応える(コールアンドレスポンス)。
このようにして、ホーダでは音楽と動きと言葉が絶え間なく交流し、カポエイラの歴史や哲学や精神を表現する。
全体的なホーダの流れ
ホーダの始めでは、ゆっくりとしたジョゴ(ゲーム、動き)から始まる。
段々とトーキ(リズム)が速くなるとともにジョゴも速くなり、さらに速いジョゴとトーキに移行した後、ホーダを閉じ全員が満員電車のように集まってアシェ(エネルギー)が最高潮になった所で終了。
ジョゴのスタイルについて
ホーダの始めでは、アンゴラのジョゴをする事がある。または、ゆっくり目のジョゴをし、それほど激しさはなく滑らかな場合が多い。
ホーダの中盤では、トーキが速くなるのに合わせて、ジョゴも速くなりアクロバティックで、派手なな動きも多くなる。基本的にあらゆる技を使える場面でもあり、その後、終盤にかけてはさらに速いジョゴになる。
そのまま終了する場合もあるが、ホーダを狭めてさらに続ける場合も多い。狭いホーダでは、大きな技は繰り出ししにくく、自然とミウジーニョ的な小さなジョゴになる。ここでは、ハステイラやフェイントは少なくなり、滑らかさと相手との協調が重要になる。
ホーダの大きさ
基本的に、序盤から終盤まで一つの大きさで行われることが多い。参加する人数によりそのサイズが違う事はあるが、基本的に直径3m~5m位。
ただし、ホーダ主催者の意向により、サイズは自在に変えられ、特にホーダの最後の方では次第に狭められて、通常のミウジーニョのジョゴでは直径3m以下、場合によっては直径1m程の非常に小さいホーダでジョゴをすることもある。
ホーダの作り方とその流れ
人数が少ない場合は、等間隔になるようにきれいな円を作る。自分自身が正しい位置に居るか分からない場合も多いので、周りから声を掛け合って円を維持する。人数が多い場合は、二重三重になる場合もあるが、最前列の人が抜けた場合は、すぐに後ろの人が詰める。
ホーダの序盤では、周りの人もバテリアも座った状態から始まり、中盤から終盤にかけてホーダ主催者の指示で周りの人間は立ち上がりさらにアシェを送る。終盤では、さらにバテリアも立ち上がりアシェを最高潮に高め、ホーダが狭まてアシェを凝縮する。
ホーダへの入り方
基本的にビリンバウの下より座った状態で入る。
特に指示が無ければ、二人づつ入り、二人づつ出て行くという方式で、フォーマルなホーダであればあるほどその傾向が続く。
その後、流れに応じてホーダ主催者が指示をして、コンプラージョゴ(直訳は、ゲームを買う)と言われる一人づつ入る方式になる。
二人づつ入る場合も、一人づつ入る場合も、入る前後で相手と握手をするなりして挨拶をする。
ホーダからの出かた
こちらも基本的にビリンバウの下まで戻り、バテリアの端から出る。
フォーマルであればあるほどその傾向は続くが、ホーダの流れと共に入れ替わりが速くなった場合は、ホーダの流れを壊さない事が最重要となり、新たにジョゴをする二人に邪魔にならない様、近い場所から出る場合もある。
速いホーダになった際に出る場合は、背を向けて退出すると非常に危険なため、自分のジョゴが終わった後もホーダから完全に出るまで注意をし続けることが重要である。
バチパウマ(手拍子)
アンゴラジョゴの際は、通常2回。チチチントントンの真ん中のチントンに合わせる。通常のジョゴに移行したあとは3回、チントントンに合わせる。終盤以降は、ホーダ主催者の指示に従い、サンバの叩き方と同じになる。
まとめ
カポエイラのホーダとは、音楽と動きと言葉が絶え間なく交流する、生き生きとした空間。ホーダは、カポエイラの歴史や哲学や精神を体現する場でもある。
ホーダでは、カポエイリスタたちが、互いに挑発や敬意を表しながら、美しくも激しい動きで対話する。ホーダの周りには、手拍子や歌で応援する人々が立っている。
ホーダの正面には、ビリンバウをはじめとする伝統的な楽器が奏でるカポエイラのリズムやメロディが響く。
ホーダは、カポエイラのゲームを行うだけでなく、カポエイラのコミュニティを形成する重要な要素でもある。ホーダに参加することで、カポエイリスタたちは、自分の技術や表現力を高めるだけでなく、他のカポエイリスタたちとの絆や信頼も深めることができる。
ホーダは、カポエイラの魅力や奥深さを感じることができる場。カポエイラに興味がある方は、ぜひ一度ホーダに参加してみてほしい。