最近のクラスを見ていてハトが感じていること、少し考えがまとまっていないながらもつらつらと書いてみます。
ちょっと小難しいので先に結論を書いておくと、「カポエイラは動きや技を学ぶ事が目的ではなく、それらを通して人生を学ぶ事が目的」という話。
なんだかずいぶんと大げさな話みたいですね(汗
カポエイラを習うと得られるもの
多くの場合、以下のようなものが手に入ると想定して習っているのではないかと思います。
- 引き締まった体
- カポエイラの技
- 格闘技的な強さ
- アクロバットができる身体能力
- 柔軟性のある体
これは主に身体的なものです。
知覚的な点に関しては、以下のようなものが手に入ります。
- 視野を広げる認知能力
- 体全体を使った表現力
- 自分の体を思い通りにコントロールする身体操作能力
- バランス感覚
これ以外に音楽面でのスキル上達などもあります。
しかしながら、これらはどれも表面的なものばかりです。それら自体は良いのですが、もっと内面的な部分に目を向けてみるとどうでしょう?
- 柔軟な思考能力
- 不測の事態にも慌てない対応力
- 明文化されていない状況への順能力
- 自分の意外な可能性に気付くことで得られる自信・自己肯定感
- 不利な状況でも諦めずに現状での最善を見つける不屈の心
などなど。
今回は、この最後に挙げた内面的な部分について、次から3つの章に分けてお話します。
カポエイラは人生の厳しさを疑似体験するスポーツ
カポエイラは他のスポーツと違い、負けたら終わりではありません。
相手に転ばされて倒れても、何度でも起き上がって続けることが可能な遊びです。
念のために説明すると、カポエイラは蹴りを相手に当てて打ち倒す、ということはほぼ無い当たらない格闘技ではありますが、代わりに足払いなどで相手を倒す場合が多くあります。
倒したところで試合が終了するわけではなく、単に「倒されて悔しー」と本人が思うだけで、そのままゲーム続行するエンドレスな競技なのです。
倒されることで多少驚いたり、軽い痛みを感じますがケガをするような激しいものではありませんし、初心者は足払いをされることはありませんのでご安心を。
ハトはカポエイラのこの点を人生の縮図だと考えています。
つまり、転んだら立ち上がる、失敗したら再挑戦する、まさに人生の厳しさを疑似体験できるものがカポエイラの試合には詰まっているのです。
ただ残念なことに、倒されなれていない人にとっては足払いは非常にショッキングなことらしく、倒されると頭に血がのぼって暴力的に反撃してきたり逆に心が折れてしまい、試合続行が不可能になる場合もあったりします。
これは人生に置き換えると、好きな人に裏切られてからメンヘラになってしまった、1回就職に失敗しただけでそのままヒキニートになってしまった、という感じでしょうか。
柔道における受け身のように、転ぶ練習をしておくことで大怪我を防ぎ厳しさに慣れておく。
カポエイラでは転んだら立ち上がることで、会社や学校で少しくらい失敗しても、立ち上がる強い心を育てているのです。
カポエイラは応用力を身につけるスポーツ
例えばカポエイラの技を習うのは、1+1=2という答えのある問題を練習しているようなもの。
この点は他のスポーツや格闘技と同じで、分かりやすい目標に対して反復練習でスキルを習得する感じだと思います。
一方、カポエイラの試合の中では習った技を駆使しつつも、どのように立ち回ったら良いか?自分がどう振る舞うか?は明確なルールがあるかどうか以前に、TPOに応じてコロコロと答えが変わります。
これは初心者には非常に想像できない点で分かりにくいですが、例えばカポエイラの試合では円の中で2人が周りの人と入れ替わりながら闘うのですが、そのタイミングがいつなのか?誰も答えを知りません。
場合によっては、入ろうとしたら制止されたり、入らずに様子見ているといつまでも順番が回ってこずに参加出来なかったり、はたまたもっと積極的に参加しなさいと言われたりと、わけが分かりません。これはカポエイラ歴20年のハトですら分からない場合があるカポエイラの謎の一つです。
つまりカポエイラは他のスポーツや格闘技、学校の問題集のように答えがハッキリとしている万人に易しいスポーツではないということです。
ここで何が言いたいかというと、この点もまさに人生の縮図。答えがハッキリしている問題よりも、正解が全くわからない謎ばかりなのが人生、それとかなり似たようにハトは感じるわけです。
時々、「円の中での闘いはいつ交代すれば良いですか?」と聞かれますが、例えるなら「飲み会で気になる子に話しかけるには度のタイミングがベストですか?」と聞いている感じかもしれません。
答えは、「相手や周りの状況を見て臨機応変に!」という感じで、もちろんある程度のアドバイスやヒントはお伝えしますが、テストの問題のように明確な答えが存在するわけではないということです。
カポエイラは積極性を身に付けるスポーツ
クラスで良く言うのが、「教室に入ったらあなたはもう日本人ではありません。ブラジル人です。」です。
キックとエスケープの練習のたびに頭を下げて挨拶をしたり、順番をどうぞどうぞと譲り合ったりなど、日本社会では普通のこともブラジル社会では必要ありません(よく知らんけどw)。
さらに、例えば前章の交代のタイミングが明確になってない場合の話など、「何をやるか明確に分からないからできない」という、唯一の正解がどこかにあるかのように考えてしまうような行動をしてしまう人も居たりします。
日本人の感覚では、確かに明確な指示が無いと動けないというのは分かるのですが、カポエイラにおいてはよく分からなくても動くという応用力というかフットワークの軽さというか、そんな積極性が大切です。
ラテンの国に旅行に行ってよく気をつけるように言われるのが、「道を訪ねる時は3人ほどに聞いて確認しろ」です。
なぜなら、ラテンの人は自分が知らないことでも答えてしまうからです。
空気を吐くように嘘をついているとか人を騙そうとしているというわけではなく、知らないや出来ないと言わずに何でもポジティブにしまうという性質が、正確な答えが必要な問題に対しては裏目に出てしまうわけですね。
だから、答えのない曖昧な問題に対して何らかの答えを出さなければいけないような場合には、このような積極性がとても役に立つわけで、特にわれわれ日本人には必要な能力なのではないでしょうか?
まとめ
以上、少し小難しい話をまとまりもなく書き綴ってしまいましたが、カポエイラに興味がある方の参考になれば良いと思います。
このように、単なる運動や格闘技ではなく、その人の内面までも大きく成長できる点が、カポエイラの面白い点です。
もし分かりにくい点、疑問が湧いた点などがあれば、遠慮なく質問してください。